「ベランダにて。」
ブログを書きたいが、指が進まなかったためベランダにてタバコを一本嗜む。
フィルターを通し自分の肺へと煙を誘い、すう。と息を一つ入れ、はあ。と煙を吐く。
すると宙に舞った白い煙の中に面白い話がうっすら浮かんできた。
しかし、煙の量が少なかったためか、なかなか読むことが叶わない。
ならばと次は先程より多く煙を吸ってまた吐く。
こんどは先程よりも濃い煙だったので、最初の一行だけ読み取れた。
「これは面白い文章だ。」
ぼくはわくわくして、また大きくタバコの煙を肺に入れ、ぼわ。と吐き出す。
そうするとまた次の行を読むことができた。
煙の中に浮かんだ文章はとても面白く、タバコが止まらない。
「おお」と思い吸っては吐く。また吸っては吐く。
おそらく次に吐く煙で最後の行、「オチ」が読めるとき、
既に有頂天のぼくは、今までで一番大きな呼吸でタバコの煙を吸った。
すると肺が耐えられなくなってしまったのか、げほげほ。と大きくむせてしまった。
ぼくがした咳の勢いで、煙はまばらになり文字は消えてしまった。
そして今まで読んでいた面白い文章も咳と共に吐き出され、空に消えていき、もう思い出すことはできなかった。
それから何度タバコを吸ってみても、二度と煙に文章が浮かぶことはなかった。